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狂熱 7


薄汚い雑居ビルのホテル乃木坂。それは外観だけだった。
ビジネスホテルの一室に、あたりまえにあるベッド、小さな机にテレビがないからかもしれない。
木製のおおきな事務机に、白い革張りの一人掛け用ソファーが二却並び、テーブルをはさんで四却ある。
スチールラックには、まださほど書類はない。これからなのだろう。
壁には、レプリカだろうが、FLOWER BOMBERが掛けられている。おしゃれな事務所だ。

「桜さんグループ名は、もうきまってるんですか」
「まだですね」

原田が、ソファーに座ると、桜は隣に座った。

「メンバーって、八人、いや、十人でしたっけ、結局、最終選考というか、最後まで残ったメンバー全員で、デビューするんですよね」

桜が腕を組む。それもしたり顔で。
麻衣、そんなことまで原田さんに話してるですか。たぶんそうだろう。

「確かにそのとおり、最終的に残ったメンバー全員でデビューしますが、あれっ、何人だったかな、でもそれぐらいの人数ですね」

桜は、デビューするメンバーの人数も憶えてない。だいじょうぶなのだろうか。

「最終的に、二人だったかな、もしかしたら不合格になるかもしれない、麻衣はそう言ってましたけど、なんで全員でデビューさせることにしたんですか」
「一人でも多いほうがいいでしょ。いきなり二、三十人だと管理がむずかしいので、まぁ、十人くらいが妥当かなと」

桜にやる気はあるのだろうか。

「そうなんですね。でも、桜さんの御眼鏡に適った。みんなかわいいんでしょうね」
「えぇ、みんな原田さん好みだと思いますよ」
「写真とかないんですか……」
「えぇ、ここにはないですね」

ならどこにあるのだろう。ここが、あたらしいアイドルグループのオフィスなのに。

「でもやはり原田さんにアドバイザーになっていただいて正解でした」
「はぁ……」

桜は、ころころ話をかえる。
しかし原田は、まず正解でしたの問いがわからない。でもの意味もわからない。アドバイザーになった憶えもない。

「目標がBSD47、BSDに負けない、BSDに追いつけ追い越せ。そのようなアイドルグループは山ほどあるでしょう。でもライバルと宣戦布告するのは斬新です。眼から鱗が、それ以上。頭をぶん殴られた気がしましたね。それいいです」
「ハードルが高すぎにはならないですかね」
「デビューしたばかりのアイドルグループがBSDのライバル。ふざけてるのか、そうなるでしょうが、BSDのアンチを、どれだけ味方にできるかどうかにかかってますね」
「それなら一つだけ方法はありますね」
「どんな方法ですか」
「BSD47のスキャンダルを隠さない。すべて暴露しろとまでは言いませんが、スキャンダルの隠蔽、メンバーの所属してる事務所の規模によりあるんですよね。そういうのをやめる、すいません。三流週刊誌並みの知識しかありませんが……」
「ふふっ、それ父に、おなじことを言われました」
「同志はなんて……」
「おまえが仲良くなって知ったメンバーの男関係。必要ないメンバーなら卒業、脱退させる。必要、需要があるならスルーするから、マスコミにリークしろと……」
「最近多いですよね。BSDメンバーのスキャンダル発覚。もうスポーツ紙の記事にもならないし、ファンにしか話題になりませんけど、それって、桜さんが立ちあげるアイドルグループのためなんですか……」
「ふふっ、えぇ、そうです。びっくりしました。父と原田さんがおなじような意見を……」
「ふっふふ」

桜は、これから父と喧嘩をするんです。そう言ったはずなのに、まだズブズブの関係だ。佐藤と桜になにかあった。そう心配したのを、原田は馬鹿らしくなった。
それにスキャンダルが発覚したら、ふふっ、ではない。
原田と桜の談笑はつづいた。
あたらしいアイドルグループの話題より、桜は、昨夜の奈々の話に興味があるようだった。

「じゃあ、桜さん、そろそろ帰りますよ」
「あらっ、どうしてですか、もっとアイディアを授かりたいのですか……」

原田がさりげなく時計を見ると、もう昼前だった。
あたらしいアイドルグループの話題は皆無。
奈々から敦子の話題になったので原田は、そう言った。桜にペラペラ喋るのがもうしわけない。

「そういえば敦子から連絡ありましたね」

桜は、こんな言い方がすきだ。奈々、こう言ってましたよ。咲良は、こう言ってましたよ。原田にすればいやな言い方だ。気になってしかたない。

「なんて……」

原田は自分がいやになる。

「シュウサクと密会してるの記事になったら揉み消してと……」

できるんですか。その必要はないだろう。できるから、するから敦子は桜に頼んだ。そういうことだろう。

「桜さん、おねがいしますね」
「ふふっ、あたりまえじゃないですか。芸能界に復帰しようとしてるのに、ゲス不倫が発覚。敦子の芸能活動、私生活もめちゃくちゃになるんですよ」

貴女が敦子を紹介してくれましたよね。
原田はそう思うが、誰がヤレといいました。それでチンだ。

「あっちゃん、そんなこと言ってくれてたんですね」

しかし、敦子が桜に、そう連絡しててくれたことは、原田は素直にうれしい。
桜が嘘を言ってない、それを前提としてだが。

「でも、原田さんは、若い娘、それも処女が、おすきだったのでは、敦子みたいな人妻でもいいんですか……」

敦子は確かに人妻。
だが、敦子は、元トップアイドルで、こどもがいる。その敦子を抱く。処女のアイドルを抱ける確率と、さほどかわりないのではないだろうか。
その敦子を原田は抱いた。その前に、どれくらいの確立。そんなものはない。

「桜さん、今日、麻友に逢っていいんですか……」
「ふふっ、もちろんですよ……」

話題は、すべて桜がリードしている。原田は敦子の話をしたくないから麻友の名前を口にしたのではない。
桜は、今日逢える予定の麻友の話題を、一切しなかった。それが気になる。
しかし、たぶん、これが桜のやりかた、いやなところだと原田はわかっているが麻友の話題を自ら口にした。
あたらしいアイドルグループはどうするんですか、どうなるんですか、麻友はライバルグループのメンバーじゃないですか。桜は言わなかった。
もちろんですよ=逢え。原田は、そう解釈した。



























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